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ボッシュが考える「働き方と職場の未来」
──新研究開発施設・フュージョンプロジェクトが目指すもの

ボッシュでは現在、ボッシュ・グループの新たな研究開発拠点のプロジェクトを進めています。国内各拠点に分散していた研究開発のリソースを、横浜市都筑区に新築されるキャンパスに集約し、未来を司る新たな融合を生み出す「フュージョンプロジェクト」。そのプロジェクト名はまさに“融合”を意味しています。プロジェクトの概要や狙いについて、フュージョンプロジェクト推進室を率いる下山田と、メンバーの佐伯に語ってもらいました。

フュージョンプロジェクト推進室
シニア・ゼネラル・マネージャー
兼渋谷施設管理部
ゼネラル・マネージャー兼渋谷本社事務所長

下山田 淳

技術融合で開発能力を強化、新たなイノベーション拠点に

まず「フュージョンプロジェクト」の概要と誕生の背景を教えてください

下山田:ボッシュが現在計画している新拠点は、横浜市都筑区の市営地下鉄センター北駅から徒歩5分の場所に位置する、地上7階、地下2階、延べ床面積が5.3万平方メートルの施設です。

2024年に竣工予定で、現在渋谷にある本社も含め、東京・横浜エリアの8拠点の従業員約2,000名がこの研究開発施設に移転します。建設プロジェクトに対する資額は約390億円と、1911年にボッシュが日本市場でビジネスを開始して以来、最大額となります。

日本におけるボッシュの事業は着実に成長しており、直近数年を見ても従業員数、国内の拠点数は共に増え続け、自社ビルだけでは人員を収容できず、各所に賃貸オフィスを借りざるをえないという状況がありました。まずこれらを集約する必要性を感じています。

ボッシュはグローバル全体でソフトウェア人材を毎年10%増やしており、日本においても2023年末までに250名のソフトウェア人材を新たに採用する計画があります。新しい拠点は、ソフトウェア人材やAIに精通した人材が十分に活躍できる環境も目指しています。

単に人員を集約するだけでなく、未来のモビリティを構想する上で、事業部を横断した知識の共有、そして様々な分野にまたがる協業を進める必要性を感じていたというのも重要なポイントです。

2021年1月にはクロスドメイン コンピューティング ソリューション 事業部(XC事業部)を始動していますが、これはまさに従来の事業領域をまたいで、ソフトウェアとエレクトロニクスの技術を融合し、未来の車両システムをコントロールするソリューションの提案を担ったものです。そうした協業をより効率的に進める上でも、新しい研究開発拠点が必要になりました。

新拠点には、車両制御、安全システム、運転支援および自動運転、HMI(ヒューマンマシンインターフェイス)、車載電子部品、車載ソフトウェア、ネットワーク化サービス、エンジニアリング、オートモーティブアフターマーケットなどの事業部やグループ会社を集約させます。

同時に、渋谷の本社機能、さらにモビリティ以外の産業機器やエネルギー・ビルディングテクノロジーなどの事業部門もこの施設に移転する予定です。新研究開発拠点の設立により日本国内における開発能力がさらに強化されることを期待しています。

歴史のある地域で、モビリティの未来を切り開く

新拠点を都筑区に選んだ理由を教えてください

下山田:横浜市が都筑区に区民文化センターを建設する敷地の事業開発者を公募していたんですね。たまたまその敷地は、パワートレイン関連の研究開発などを行っている現在の横浜事業所(牛久保)と直線距離で2キロほどしか離れていない。近隣に新しい研究開発施設を建設することで、事業所間のさらなる技術融合も進むであろうという狙いもありました。

新しい施設のデザイン予想図も公開されていますが、このデザインに込めた想いはどのようなものでしょうか

下山田:ボッシュは技術系の会社であり、特にモビリティにおいては、最先端の技術力を活用して自動運転の未来を切り拓こうとしています。その未来志向をビルのデザインに込めました。外観は非常にシンプルな長方形、建物のデザインもシックな色合いにしています。

建屋の地下につくる予定の実験施設は、温度環境も含めたあらゆる条件下で車の実験ができるものにしたいと考えています。ハリウッド映画に出てくるような、世間の皆さんが見たらあっと驚く自動車をこっそり研究するかもしれません(笑)。

一方で、都筑区は1万年の縄文遺跡や貝塚、墳墓などの古代遺跡が発掘されている歴史を持つ街。そうした歴史に思いを馳せながら、建物には過去・現在・未来をつなぐ躍動感も表現しようとしました。

2024年度竣工する「新研究開発拠点」イメージ画像

環境先進オフィス、公民連携のプロジェクトとしてもグループを先導

新しい研究開発施設ですから、環境への配慮も重要になりますね

佐伯:もともとこのエリアは、森林と水辺、そして歴史的な遺産を緑道で結ぶ都市計画に基づいて整備されています。新拠点の敷地内にも植栽や緑地を整備し、ここを訪れる方々にくつろぎの空間を提供出来ればと考えています。

さらに、ボッシュならではと言えるのが、カーボンニュートラルやサスティナビリティへの取り組みですね。ボッシュ・グループには、モビリティ用途の水素アプリケーション向けの製品や固体酸化物形燃料電池(SOFC)の開発を進める部門もあります。新社屋には、都市ガスで稼働するSOFCシステムを導入し、これで電力を生成します。

ボッシュはドイツ国内の複数の拠点でもSOFCのパイロット導入をしていますが、アジア太平洋地域の拠点での採用を決めるのは、この横浜の施設が初めての試みとなります。太陽光パネル、窓のルーバー、自然換気、雨水再利用なども含めて、先進的な環境への取り組みを進めています。

地域との関係でも、公民連携プロジェクトであるという点が特筆されます

下山田:横浜市との約束として、私たちボッシュも区民文化センターの建設に関わり、区民文化センターと新社屋の相乗効果で地域のにぎわいを創出し、地域活性化につなげるというミッションがあります。グローバルで見ても、こうした公民連携のプロジェクトに参画するのはボッシュ・グループとしては初の試みです。

例えば現在の設計プランでは、新社屋と区民文化センターの間にあえて1000㎡の全天候型の広場を設置し、そこは年間を通じて人々が行き交い、ゆったり過ごせるような場所にしようとしています。

地域の人々がコンサートや演劇鑑賞で区民文化センターを訪れたら、そこには広場やカフェだけでなく、ボッシュという会社のショールームや多目的スペース、会議施設や研究開発施設もある。広場や施設で興味深いイベントが開催されている。ボッシュという外資系企業は何をやっている会社かよくわからなかったけれど、面白そうなことやっているじゃないかと、住民のみなさんが知るきっかけになってくれたら嬉しいですね。

施設に近づくと、スマホにインストールしたアプリがボッシュの最新イベントや技術案内をするなど、ボッシュのエンジニアが自分の家族や友人に会社を自慢できる、そんな仕掛けも盛り込んでいこうと考えています。

オフィスデザイン、ワークスタイルを自分たちで決める文化

新社屋にどんなオフィスデザインを導入するか、社員が自由に意見を出し合って決めるというのも、ボッシュならではの文化ですね

佐伯:ボッシュには社員同士の対話(ダイアログ)を重視し、ボトムアップで社員たちの意見を吸い上げる文化があります。今回のプロジェクトでも、「アイディアベースでいいから意見を出し合い、社員が来たくなる施設を社員と共に作っていこう」と、チェンジマネジメント活動をチームで進めています。

例えば、食堂のインテリアを社員投票で決めたり、パブリックエリアについてグループ会社を含めた全事業部の広報担当者とアイデア出しワークショップを開催するなど、オープンかつフラットに議論し合うのもボッシュらしさかなと思います。

コロナ禍であえて新社屋建設とは、なかなか思い切った決断だという意見もあります

下山田:コロナ禍でリモートワークが推奨され、本社機能を縮小したり、事業所を分散する企業の動きもありますね。コロナ禍・コロナ後におけるワークスタイルはどうあるべきかについては、全世界の企業や団体が真摯に取り組まなければいけない課題だと思います。

ボッシュは対話を重視する企業ですから、対面でのコミュニケーションにはやはりこだわりたい。そのためには毎日ではなくとも、好きなときに出勤して、業務やワークショップ・研修に参加する。社員同士がコラボレーションしたいと思えるような、魅力のある本社機能が必要だと考えています。

佐伯:その上で、自分たちの部署やチームはリモートがいいのか、出社がいいのか、どういうワークスタイルを選択するかについても、社員同士が話し合って決めています。全社一律ではなく、部署、チーム、ワーキンググループごとにその選択は任されているのです。

その結果、仕事がどう変わり、効率はどう上がるか結果を示し、それに沿って自分たちの働き方を柔軟に変えていく。日系企業から転職してきた人は、最初はボッシュのそうした文化に驚くようですね。

多様な働き方を可能にすると同時に、みなボッシュ・グループのメンバーであるという求心力や心理的安全性をどう担保するか。そのような“場”を提供することが、フュージョンプロジェクトの本質ではないかと考えています。

ボッシュでは会議一つとっても、ワークショップという形を取り入れ、一人ひとりの社員がアイデアを書き出して、自分の考えを可視化しながら、意見を集約していくスタイルが定着しています。場があることで、お互いが雑談し、アイデアを交換できる。それがイノベーションの芽になっていく。

そうしたボトムアップのアイデア創出をイノベーションにつなげる試みは横浜の新拠点でも強めていきたいと思います。

(写真左)フュージョンプロジェクト推進室 コミュニケーションCSR担当 佐伯妙子

フュージョンプロジェクトは、出会いの感動をもたらす新しい“場”づくり

下山田:私はときおり、シュトゥットガルト近郊にあるドイツ本社に出張することがあります。本社の関連部署のフロアにはカフェコーナーが設けられていて、部署のトップが普通にコーヒーを飲んで雑談したりしているんです。

私も通りがかりに「日本はどうだ、いま何か困っていないか?」と声をかけられたり、座の中に招き入れてもらって話をすることがあります。久しぶりのドイツ本社出張で緊張している私をリラックスさせて、会話を引き出してくれる。これはなかなか得がたい感動体験なんです(笑)。

フュージョンプロジェクトでは、そうした出会いの感動のようなものを、実現したいと考えています。役員や管理職はもちろんのこと、社員一人ひとりが感動と共創のクリエイターになれる。そんな研究開発拠点を目指したいと思います。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです。