自動駐車・駐車支援システムで大きな社会貢献を
──新技術の実現に向けて歓迎する人材とは
自動車の運転支援システムはドライバーの負担を減らし、事故を防止して安全性を高めます。現在は駐車を支援するシステム開発も進んでいます。今後はより安全で快適な機能が実装されていくでしょう。ドライバーエクスペリエンス部門パーキングシステム開発部を統括する服部秀昭に、ボッシュが目指す駐車支援システム開発の現状と課題、自動駐車システムの普及に向けた挑戦と求める人材像について語ってもらいました。
クロスドメインコンピューティングソリューション事業部(XC事業部)
ドライバーエクスペリエンス部門パーキングシステム開発部
ゼネラル・マネージャー
服部 秀昭
ドライバーの安全と安心を高める駐車支援システムの現状と課題
服部さんが率いるドライバーエクスペリエンス部門パーキングシステム開発部では、どのような開発を行っているのでしょうか
自動車の駐車シーンにおいては煩わしさや難しさに加え、壁や隣接する車に傷をつける事故や、踏み間違いによる事故が少なくありません。死角の多い駐車場では、対人事故が多いという特徴もあります。たとえ軽微な事故だったとしても、ドライバーにはつらい体験になります。
私たちはこうした駐車時の煩わしさをなくし、自動車事故を減らす駐車支援システムの開発に取り組んでいます。例えば、駐車時に人間や障害物に近づいた際には、数センチレベルの精度を持つ超音波センサーやカメラで検知して警告音を発し、自動緊急ブレーキにより衝突を回避させます。また、バック駐車や縦列駐車におけるステアリングアシストなども駐車支援システムで実現する範囲となります。
まだ欧米メーカーを中心として高級車に限られるケースが多いですが、近年は並列駐車や縦列駐車における全ての操作をシステムが担う、自動駐車システムの実用化も進んでいます。
今後は高級車だけではなく、普及価格帯の車両でもより安価で使いやすい自動駐車システムを実現できれば、煩わしい駐車操作から開放されるだけではなく、駐車場での事故を劇的に減らすことができます。大きな社会貢献のポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。
自動駐車のニーズが高い日本で、高度な駐車機能を実現させたい
日本における駐車支援システムの開発はどのような状況でしょうか
日本では、欧米に比べると狭い駐車スペースが多く存在します。そのため日本は、自動駐車の潜在的なマーケットニーズが高いと考えています。また踏み間違い事故が数多く発生しているため、踏み間違い防止機能に対する法制化の動きは日本が先行しています。
そうした背景もあり、ボッシュでは駐車支援システムの日本市場向け実車適合や、踏み間違い防止機能については日本拠点が開発の中心を担っています。日本やアジアの交通事情を加味したニーズをとらえ、事故ゼロを目指す日本の完成車メーカーと共に日々開発を進めています。
今後の開発ではどのようなことに注力していきますか
様々な環境に対応できる高度な自動駐車システムを実現するためには、カメラなど複数のセンサーから取得した情報を組み合わせる必要があります。
これを私たちは「フュージョン(融合)」と呼んでいます。自動駐車システムはまだ開発途上です。しかし、センシングや認識技術をより高度化させることで、システムの能力を高めていこうとしています。
世間一般でAIが活用されているように、自動駐車システムでもAI・機械学習を活用して認識精度の向上に活用しています。機械学習で重要になるのはデータです。駐車場の環境は地域によって異なることが一般的であり、日本をはじめとするターゲットマーケットにおいてどのようなデータを収集し、学習させていくか、その見極めをグローバルで連携しながら進めているところです。
AI/機械学習のスキルと日本の自動車や駐車環境に関する知見を兼ね備えたエンジニアが開発をリードすることで、他社に対してより競争力のあるシステム開発ができると考えています。そうしたエンジニアの採用・育成が、今後の変革における大きな鍵になります。
完成車メーカーと連携しながら、グローバル視点で開発
前職では日本のメーカーで回路設計やソフトウェア開発を行い、海外赴任も経験したとか。ボッシュで新たに学んだこと、経験したことは何でしょうか
自動車の安全性や法規に関することです。自動車やバイクは人命に関わるため、安全・安心を守る徹底した開発の進め方はボッシュで学びました。
前職では自社内で開発が完結していましたが、自動車は完成車メーカーとサプライヤーが密に開発を進めていく必要があります。完成車メーカーと日々交渉や連携を繰り返しながら開発する多様なコミュニケーションはボッシュで初めて経験できたことです。
ボッシュは日本の完成車メーカーのビジネスパートナーとして、自動車業界のグローバルトレンドも把握した上で、日本市場やドライバーにとってベストな提案をすることに力を入れています。
立場はサプライヤーですが、単に完成車メーカーの依頼や要求に従うだけではなく、むしろ提案することを求められていると思います。ここはボッシュが持つ強みであり、面白いと感じている点です。
また、ボッシュはグローバル視点で何を開発すべきかを見極めることができます。自動車部品の技術開発は競争領域と非競争領域が混在しており、ボッシュからの提案によって非競争領域における共通化や標準化が進めば開発の効率性が高まり、結果的にエンドユーザーにより安く製品を届けることにもつながります。
グローバルな開発環境と、長期的な視野でのエンジニア育成支援
開発チームのメンバーや雰囲気、ボッシュならでは職場の風土について教えてください
現在、私の部署は約30人ですが、ドイツから赴任しているエンジニアが約1割、キャリア入社者が約半数を占めます。家電メーカーや完成車メーカー出身など、多種多様なバックグラウンドを持つメンバーがいます。
開発の進め方は、まさにグローバル。日本の完成車メーカーとのプロジェクトでは少なくても30人、多いと100~200人規模となります。その中で日本人は20~30%くらいであるプロジェクトが多いので、日常的に海外メンバーと仕事を進めていくことになります。海外メンバーはドイツだけではなく、ハンガリー、インド、ベトナムなど多岐にわたります。
「現場を信頼する文化」があり、オープンでフラットな発言しやすい雰囲気だと思います。大事なのは、チームで達成すべきことのためにみんなで意見を出し合うことです。
フィードバックも双方向で行うことが推奨されています。私もフィードバックをもらいますが、「働き過ぎでは?」など、率直な指摘をもらって驚いたこともあります(笑)。おかげで、休むときはしっかり休むことを心掛けております。
社内の育成制度やキャリア形成に対する取り組みについてもお聞かせください
外資系企業には、短いスパンで転職を繰り返すイメージがあるかもしれませんが、ボッシュでは社員に「長く働いてほしい」と考えています。そのため人材育成も長期的な視野で行われており、実務ですぐに役立つ技術的な研修だけではなく異なる製品・事業においても活用できる語学研修やリーダーシップ研修が充実していると思います。
これは我々の取引先が日本の完成車メーカーで、長いスパンで協業できるパートナーを探しているからでもあります。数年で担当者が退職してしまうのは自社にとっても、顧客に対しても望ましくありません。スキルやキャリアを伸ばし、長くボッシュで働いていただきたいと本気で考えています。
また、異動自体が長期的に見て社員の成長と会社への貢献になると考えられ、社内公募も活用されています。ボッシュでは「経験を積んで成長してもらいたい。そして長く働いてもらいたい」という考えが浸透しているのです。
短期では3カ月から半年程度、2~3年の海外赴任をした経験を持つボッシュ社員は珍しくありません。海外の技術トレンドや文化に触れたい人にはとても魅力的だと思います。
ユーザーエクスペリエンスを重視した機能開発で、モビリティの変革を目指す
自動運転の時代において、ボッシュの駐車支援システムにどんなビジョンや将来像を描いていますか
事故ゼロに向けて安全性を向上しつつ、「この自動車を買って良かった」とメリットを感じるようなプロダクトを実現していきたいと思います。特に、ユーザーエクスペリエンスには力を入れていきます。
自動駐車システムと駐車支援システム、どちらにも言えるのは「使いやすさ」です。コンセプト開発の段階からユーザーの使いやすさ・見やすさを意識しながら開発を進めています。たとえ機能があったとしても、たくさんのボタンを押す必要があるとか、操作が分かりにくいのでは結局ユーザーに使ってもらえなくなってしまいます。
私たちは「どうすればこの機能を負担なく使ってもらえるか」という、ユーザーエクスペリエンスも考慮して開発を進めています。個人的には、駐車場に着いて自動車を降りたら、後はスマートフォンから自動駐車の操作をするだけ。そんな世界を実現したいですね。
その実現に向けて、どのような経験やスキルを持つ人材が活躍できそうですか?
車両システムのあらゆる自動化に向けて、高度なエレクトロニクスとソフトウェアの重要性が増しています。例えば、駐車支援システムでは画像認識、AI/機械学習の経験者、またはこれから挑戦したいソフトウェアエンジニアを求めています。
機械学習はグローバルにデータを収集して学習を繰り返していますから、クラウド、画像認識(サービス)、あるいは画像処理やデータ処理のスキルも必要になるでしょう。
また運転支援システムも含めると、各種センサーの信号を取り扱い、車両を制御しますので組み込み系や信号処理、制御系のスキルがある方も歓迎しています。私自身は前職で組み込みCPU周辺の論理回路設計及び動画処理システム開発をしていました。対象が自動車ではなかったものの、並列処理による処理性能向上や制御技術などは共通していて、この経験とスキルが現在も活かされています。
前述通り、ユーザーエクスペリエンスを重視しているので、将来の自動車やモビリティ全般に関してどんな人が使うか、どのように使ってもらいたいかといったビジョンがある人には面白みがあるはずです。
開発現場ではスクラム開発やDevOpsなど、モダンな開発手法を積極的に採り入れようとしています。そうした開発手法の経験者やこれから開発の経験を積みたい人にはエキサイティングな職場になるでしょう。
ボッシュで働くことに興味を持つエンジニアに、メッセージをお願いします
モビリティの自動運転や自動駐車の技術領域においてはまだまだ挑戦的な技術開発が続きます。現場では日々試行錯誤しながら開発していますので苦労も少なくないですが、新しいことにチャレンジしたい方には魅力的な職場であると思います。
ボッシュには失敗にめげずに挑戦し続けることを前向きに捉える文化、新しい技術を学び続けられる文化、仲間と協力しあえる文化があり、いろんな経験を通じ成長できます。
キャリアパスとしてもライン管理職への昇進だけではなく、プロジェクトマネジメントや技術を追求するエキスパートとしてのキャリアパスを用意しています。例えばソフトウェアエンジニアとして技術力を高め、ライン管理職を凌ぐ立場のエンジニアがぜひ出てきてほしいと考えています。ぜひ長期的な視点で、それぞれのキャリアアップをボッシュで実現してもらいたいと思います。
※掲載記事の内容は、取材当時のものです。(2022年10月24日公開)