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在宅と出社の割合はチームで決める、ハイブリッドな働き方──
ボッシュの新人事制度Smart Workとは

ボッシュは2022年、出社とリモートを組み合わせたハイブリッドなワーキングモデル “Smart Work”を世界のボッシュ・グループで実現していくことを表明しました。コロナ禍を経て実現した新たな働き方とは、いったいどのようなものなのでしょうか。人事企画部で制度設計に携わる折原 祐太にこれまでの取り組みと今度の展望を聞くと、Smart Workを成り立たせるボッシュの自律的なカルチャーが浮かび上がってきました。

人事部門 人事企画部

折原 祐太

まず、Smart Workの概要について教えてください。

ボッシュがグローバルで掲げる「新しい働き方」こそがSmart Workです。ドイツの本社はもちろん、欧州やアジア、そして日本と全世界の拠点で取り組みを進めています。国や地域の特性や法律によって最終的な制度はそれぞれ異なりますが、日本のボッシュ・グループにおいては「出社とリモートのハイブリッド型の働き方を基本とし、チームメンバーとの話し合いを通して最適な働き方を自分たちで決定する」ことが特徴です。

会社がルールを定めるのではなく、自分たちの働き方をチーム単位で決めることができる制度はなかなか例がないと思います。

そうですね。これはSmart Workの指針のひとつである“信頼”を反映した制度です。ボッシュでは2016年から在宅勤務制度を導入していますが、コロナ禍において従業員の健康・安全を守るためにリモートワークへ移行したことが大きなきっかけになりました。ウィズ・コロナ、あるいはアフター・コロナにおいて以前の働き方に戻すのではなく、“従業員を信頼してより柔軟的に働ける制度を導入する”ことを選んだのです。

コロナ禍で得られたリモートワークの経験を、新しい働き方に反映しているのですね。

エンジニアからは「作業に集中する時間を確保しやすくなった」「通勤時間が減ったことで家族と過ごす時間が増えた」とリモートワークを歓迎する声が多い一方で、いままで一緒に仕事をしていたメンバーと会わなくなる寂しさや、接点がなくなることへの不安を抱くメンバーも少なくありませんでした。そこで「リモートと出社は5:5」「作業できる場所は自宅のみ」などの制限を撤廃し、チームや業務内容によって自分たちに合った働き方を選べるようになりました。一定のセキュリティ要件を満たせばどこからでも勤務が可能です。

実際に、どのように自分たちの働き方を決めているのでしょうか。

組織上の最小単位である数名のグループごとに話し合いの場(ワークショップ)を設けてもらいました。私たちが用意したフォーマットも活用しながら「コロナ禍の働き方で何を感じたか」「良かったこと、難しかったこと」などの想いを共有したうえで、どの程度の割合で出社とリモートを使い分けるか、チームミーティングはどんな方法で行うか、働く場所はどこか、などのルールをすり合わせていくのです。

あるチームでは「家族と過ごせる時間が増えるリモートワークを基本にしたい」というメンバーもいれば、「メンバーと顔を合わせる機会がなくなったことが寂しい」という意見もありました。それぞれの意見が集まったことで「毎週金曜日は出社して一緒にランチをする」「自宅やオフィスなどの勤務場所を予定表で共有する」といったルールを決めました。その結果、それまで実践していた働き方と大きな変化がなかったとしても、自分たちで選んだルールだからこそ、納得して取り組めているようです。

ボッシュジャパンのSmart Workを実現するまでにどのような苦労がありましたか。

当初は「こんなに自由にしてしまって大丈夫だろうか」という不安の声はありました。ただ、そうした心配をするよりも、コロナ禍でも実績を積み重ねて会社を成長させてきた社員を信頼しよう、という思いがベースにあったのです。

ネットワークやセキュリティなどの技術面でも問題はありませんでしたが、制度設計を行う上での苦労はありました。人事企画部ではワークショップをスムーズに進めるためのモデルアジェンダを定め、Smart Workハンドブックを作るなど、現場で混乱が起きないよう念入りに準備を進めましたね。

そういった苦労があって、各チームが自律的に働き方を決められる制度がスタートできたのですね。

ワークショップでの話し合いがスムーズに進んだのは、もともとチーム単位でのファシリテーションができ、仕事やキャリアも自分たちで決めるというボッシュのカルチャーに助けられた面も大きいかもしれません。外部のコンサルタントなどを活用することなく、自分たちの働き方を変えることができるのは、ボッシュが持つ強さだと感じています。

Smart Workはゼロから生まれた制度というよりも、ボッシュの自律的なカルチャーとこれまでの信頼関係が形になったものと言えそうです。

そうですね。会社が仕事やキャリア、働き方を用意するのではなく、個人個人が実現したい目標を尊重し、それを会社がサポートをするというお互いへの信頼がベースにあります。Smart Work以外の制度面でも、自主学習のための休職制度や週休4日も可能な短時間正社員制度(週20時間以上、3回以上の勤務が条件)など、それぞれの将来設計や事情に合わせた幅広い選択肢を用意してきました。希望する女性の100%、男性においても約50%という育休取得率の高さや、年休取得率ほぼ100%などの実績も、社員の人生を大切にしていることの表れであり、会社への信頼につながっているのではないでしょうか。

Smart Work in Bosch ガイドライン(出社率について)

当社ハンドブック資料より一部抜粋

遠隔地からフルリモートで働くことが可能な制度や短時間正社員制度も、働きながら学び直しをしたり、育児や介護などをしながら働き続けたいという多様なワークスタイルのための制度です。「家庭の事情で会社を辞めなければいけない」「新しいことをしたいから転職しなければならない」で終わらずに、社員の選択肢を増やしたいという思いがあります。

ボッシュは、副業についても大きく制度が変わったと聞いています。

以前よりも大幅に条件が緩和され、個人事業主、フリーランスの形態で副業することも可能になりました。そこで得られた技術や経験をぜひボッシュで活かしてもらいたいですね。

こうした取り組みはこれまで人事部門に寄せられた社員の声をもとに、今後会社を変革していく人財の獲得に必要な施策として制度化が進められました。2年前から人事部門内のHRビジネスパートナー、制度設計、採用、人材開発、オペレーション、トレーニングチームからメンバーが参加するTransformation Teamを組織し、現場の声を拾い上げながら副業や遠隔地からのフルリモートワーク、コアタイムなしのフレックスタイム制度などを整えてきたのです。

副業も週休4日制度も「一部の社員が活用する制度」というイメージを抱いてしまいがちですが、多様な人材にとっての “選択肢の広さ”を用意しているのですね。

確かに、すぐに副業や短時間正社員制度を使う社員は多くないかもしれませんが、制度が整っていることが重要です。育児や介護、配偶者の転勤など、ライフステージの変化は誰にでも起こりえます。

キャリアにおいても現在の業務で使っていない技術に興味がわくこともあるはずです。今すぐではなくても、将来的に育児・介護等の理由によりフルタイムで勤務することが難しくなったときに「会社を辞める・転職する」以外の選択肢を用意しておくことで、ボッシュが多様な働き方の受け皿になっていきたいと思います。

ボッシュへの入社を考えている方に、Smart Work担当者としてのメッセージをお願いします。

これまでもお話した通り、自分たちの働き方を自分たちで決めるSmart Workは、ボッシュの特色が表れた一例にすぎません。根底には、働き方やキャリアに限らず日々の仕事についても“自分でドライブしていく”というボッシュのカルチャーがあります。自律的に自分のキャリア・働き方を選びたいという志向性の方には、とても働きやすい会社だと自負しています。

メリハリをつけて働ける制度が整った環境で、自分自身を成長させながら、会社にも貢献する。そんな信頼関係をベースにした新しい働き方を、ボッシュで実現してください。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです。(2023年3月22日公開)