【ボッシュ新本社】電波暗室でのレーダー試験:開発スピードと信頼性の向上

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お客さまに「すぐ応えられる」場所を、日本に
2024年、日本のボッシュ新本社にクロスドメイン コンピューティング ソリューション事業部(以下、XC事業部)のレーダー性能試験向け「電波暗室」が新設されました。これにより、従来ドイツやハンガリーなどの海外拠点で行っていた試験を日本国内で完結できるようになり、自動車メーカーからの要望に対する対応スピードと技術的信頼性が飛躍的に向上しました。
レーダーの性能を正確に評価するには、周囲の不要な反射を極限まで排除した環境が必要です。電波暗室では、三角形の反射ターゲットを除くすべての反射を抑える特殊な壁面構造を採用。世界中にあるボッシュの拠点で統一された設計のもと、日本にも同様の設備が整備されました。

この導入の背景には、フロントレーダーに加え、コーナーレーダー案件の拡大があります。コーナーレーダーは、より多様な塗装や形状に対応する必要があり、従来の海外での測定結果を待つ体制では、日本の自動車メーカーの期待するスピードに対応しきれない状況でした。
日本にこの設備ができたことで、サンプル受領後、従来1カ月かかっていた結果報告を、最短約1週間に短縮できるようになりました。国内での即応体制が、技術面でもビジネス面でも大きな武器となっています。
高精度な電波評価と分析を、ワンストップで
この設備では、車両のバンパー素材や塗装の違いによるレーダー性能への影響を確認するため、さまざまな角度・素材での試験が可能です。開発初期段階では、車のデザインに深く関わるレーダーに最適なバンパーの塗装色や材質、搭載位置の検討を、また量産直前には最終仕様の確認を行うなど、幅広いフェーズにおいてサポートしています。
また、ボッシュの電波暗室は試験装置の自動化が進んでおり、角度や位置調整などを高い精度で再現することが可能です。他社が手動で行っている作業も自動で行うことができ、再現性、精度、スピードのすべてにおいて、自動車メーカーより高い評価を受けています。

「日本でできる」が、お客さまとの信頼を深める
日本の自動車メーカーは品質への意識が非常に高く、さまざまな条件や状態を想定した、多角的な評価を求められることもあります。従来の海外拠点における試験では、他国プロジェクトとの兼ね合いで日本の自動車メーカー特有の全項目を試験するのが難しいこともありました。
しかしながら、電波暗室を国内に設置し日本で全項目の評価を確実に実施できる体制が整ったことで、即時のフィードバックが可能となり、日本の自動車メーカーからの信頼性の向上につながっています。
また、ラボツアーや現場見学を通じて、設備の先進性と対応力をお客さまに直接体感してもらうことで、日本における技術力への理解と信頼関係の強化に努めています。
自動車の研究開発、今後の展望

現在、日本で試験を担当しているのはXC事業部の中でも数名のエキスパートたち。測定方法自体はトレーニングにより習得可能ですが、結果の分析には高度な経験と知見が求められます。たとえば、同じ色でも含まれている塗装の成分の微差で結果が大きく変わることがあります。なぜ結果がOKだったのか、NGだったのか。細かい違いを読み解き、背景まで含めてレポートに落とし込む力が必要です。
約8年にわたりレーダー試験に携わってきたエンジニアの1人は、「自分が関わった車が街中を走っているのを見ると誇らしい」と語ります。さらにチームは今後、CAD上での事前確認や、誘電率測定など、より上流から試験支援を行える体制づくりにも取り組む予定です。
実際の部品がなくても、仮想空間でシミュレーションできれば、開発速度はさらに向上します。日本の力向上へのよりいっそうの貢献をめざし、XC事業部のエンジニアたちは今日も業務に取り組んでいます。
※記載内容は2025年7月時点のものです。
※このページは「talentbook」に掲載された内容を転載しています。
出典:https://www.talent-book.jp/bosch/knowhows/58809