人命を守る究極のミッションを技術で支える、クルマの乗員保護システム技術開発エンジニアの挑戦
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自動車産業は、100年に一度の変革期を迎えています。電動化や自動化が未来のモビリティを形作る中で、ボッシュのビークルモーション事業部は、その根幹を支える「安全性」の未来を創造しています。とくに、人命に直結する乗員保護システム部門は、自動車の最終的な「砦」として、乗員を守るエアバッグECU(※)の開発をしています。
今回は、乗員保護システム部門で活躍する3名のエンジニア、馬(ま)、新田(にった)、ベに、ボッシュでのキャリア、日々の挑戦、そして「人命救助」というミッションへの熱い思いを語っていただきました。
※ ECU :Electronic Control Unit - 自動車のさまざまな電子制御を行う電子制御装置
乗員保護システム部門にたどり着くまで。キャリアの出発点とは
馬:前職では心電図のアルゴリズム開発に携わっており、人命救助に関わることへの強い思いが芽生えました。ボッシュに応募した際、採用担当者から自動運転開発の部署とエアバッグ制御開発の部署があることを聞き、迷わず事故の瞬間に人の命を守る開発に携われる、この乗員保護システム部門を志望しました。
新田:私は2012年に新卒でボッシュに入社しました。幼い頃から車が好きで、車に関わる仕事がしたいという思いがありました。ボッシュを選んだ理由は、独立系自動車部品サプライヤーとして、多くの完成車メーカーのプロジェクトに携われる環境があったことです。特定メーカーに縛られず、さまざまなメーカーの安全に貢献できることが理想でした。
さらに、大学時代の友人がバイク事故に遭った経験を間近で見たことがきっかけとなり、安全に携わりたいという思いが強まり、エアバッグECU開発に挑戦できるこの部門を志望しました。
ベ:私は大学卒業後、ロボット関連の開発に携わっていました。その後、よりグローバルな環境で働きたいと思い、2018年にボッシュ・ベトナムに入社しました。
実はボッシュ・ベトナムでのキャリアをスタートさせる前に、一度日本に来て別の会社でエアバッグのマイクロコントローラ開発に関わった経験があります。その経験と、ボッシュのグローバル環境でさらに挑戦したいという気持ちが重なり、最終的にボッシュの乗員保護システム部門を志望しました。
人の命を救う「砦」を扱う乗員保護システム部門での仕事
馬:私の役割は、お客様向けプロジェクトのGTM(グローバルテクニカルマネージャー)です。TPM(テクニカルプロジェクトマネージャー)やシステム設計担当のメンバーが所属するチームを率い、顧客からの技術的窓口を担っています。お客さまの要求を深く理解し、ボッシュの標準仕様との間にギャップがある場合には、あらためて技術的な実装提案を行います。
また、プロジェクトのマイルストーンを達成するため、リソースや予算の配分、顧客やチームとの会議での調整など、マネジメント全般を担当しています。
新田:私は車両の衝突発生時にエアバッグの展開が必要かどうかを判断するアルゴリズム、つまり主機能のソフトウェア開発を担当しています。
とくに重要なのが「適合」です。これは、ソフトウェアを使って一車一様の正しいエアバッグ展開を実現するため、パラメーターの数値を調整する作業です。エアバッグがちょっとした衝突で誤って開いたり、開くのが遅れたりしないよう、「必要なタイミングで確実に開く」ことを担保するための設定を行っています。
ベ:私はシステムソフトウェア担当で、主にソフトウェアの開発と確認を行っています。ソフトウェア開発はベトナムのチームが担当しており、私の役割は、お客さまの要求を正確に伝え、その仕様に沿ってベトナムチームが作成したソフトウェアが正しいかどうかを確認することです。
ソフトウェアを通して、お客さまである完成車メーカーの車両に適した正しいエアバッグ展開を実現するため、ベトナムチームとお客さまの架け橋として技術的説明や調整を行っています。
役割によってことなるさまざまな働き方
馬:私はマネージャーとしてチームを率いているため、顧客との会議に加え、チーム会議やマネージャー会議などが多くなります。とくに緊急案件が発生した際には、リソースや予算配分のため迅速な対応が求められます。
われわれが扱うエアバッグは安全が最優先ですので、どんな難題も乗り越えると大きな達成感とお客さまの信頼につながり、それが日々のモチベーションになっています。
新田:私は午前中に自分の作業時間を確保し、アルゴリズム開発などのタスクを進めることが多いです。昼頃にはインドなど海外チームと集まり、タスクの進捗会議を行います。午後は作成した成果物のレビューや、チームメンバーの課題解決のための会議に時間を割くことが中心です。
ベ:最近は、本当に必要な会議だけを見極めて参加するようにしています。私の仕事は、実際にエアバッグECUの製品を動かして挙動を確認することが多いため、オフィスの同じ階にあるライトラボ(※)にいる時間もあります。
ソフトウェアのメイン開発はベトナムチームが担当しており、デスクワークのときは彼らが作成したソフトウェアの確認とレビューを行います。問題が発生した場合はラボにこもって丸一日検証することもあります。プロジェクトの状況によりますが、現場で製品に触れて安全を確認することを大事にしています」
※ ライトラボ:ライトラボでは、ブレーキ製品やエアバッグECUが正しく動作するか試験設備で確認したり、製品の電子基板といったハードウェアの評価を実施したりしています。また、ブレーキシステムのソフトウェアの試験をするための、シミュレーションを行っています (▶参考動画)
ミリ秒単位で命を守る、「失敗の許されない」技術
▲エアバッグコントロールユニット
馬:エアバッグECUは見た目はただの箱ですが(笑)、その中には「絶対に不具合を起こしてはいけない」という重い責任があります。何かあれば人命に直結する製品ですから、お客さまからは最高の品質が求められます。
人間は過ちを避けられませんが、開発中に万一技術的な問題が発生した場合でも、製品の安全性を担保するために、その問題点をいかに最速で発見するかが私の使命です。最近は、自動化やAIなどさまざまな手法を活用して、早期発見を実現しています。
新田:技術的な難しさは、やはりパラメータの適合です。私たちの究極のミッションは、エアバッグを正しいタイミングで展開させることです。
しかし、たとえば車を少しこすっただけでエアバッグが作動すると、交換処理はエンドユーザーの費用負担になってしまいます。逆に展開が遅れれば命に関わります。この絶妙な「ちょうど良いタイミングで確実に開く」ための、開きやすさと開きにくさのパラメータ設定が非常に難しい点です。1,000以上のパラメータの中で一つでもミスがあれば、正しい性能を実現できません。
お客さまの納期内で完璧な性能を作り込むことは常にプレッシャーであり挑戦ですが、エアバッグが狙ったタイミングで確実に動作することをお客さまと共に確認できた瞬間の達成感は非常に大きいです。
ベ:エアバッグは車が衝突したときに展開する製品です。つまり、車両は最悪の状況にあり、電源が落ちていたり、他の安全装置が故障していたりすることも少なくありません。そのような状況下でエアバッグECUは、「車両が最悪の状況でも、唯一絶対に作動すべき製品」として設計されなければなりません。
最悪の状況下でも、保証されるべき機能が確実に作動し、事故データの記録などお客さまの要求をすべて満たすことが、技術的に最も難しい点です。この真逆の特性に挑み、完璧を追求できることが、この製品開発のおもしろさだと感じています。
グローバルな連携:世界を股にかける開発体制
馬:私が担当するプロジェクトでは、日本に約10名、ベトナム、インド、中国、米国、欧州など複数の地域拠点に開発メンバーが分散しており、全体で50〜60名規模で動いています。海外との関わりが多い部門なので、英語はビジネスレベルが求められます。
入社後も語学に関する社内トレーニングがあるので、それらをうまく活用して語学力を伸ばす方もいます。現在でも、業務時間の約8割は英語でのコミュニケーションとなっています。
新田:私が携わるプロジェクトでは、アルゴリズム開発のチームメンバーが日本とインドに約10名おり、その他の技術チームも合わせると、全体で100名ほどが日々開発に従事しています。全体を見ても、日本とインドがメインの開発拠点です。これまで、担当するお客さまによって異なる国内拠点への出張も多く経験してきました。
ベ:私の海外拠点とのコミュニケーションは主にベトナムチームです。幸い、母国語であるベトナム語でやり取りできるため非常にスムーズです。それ以外のグローバルチームとのやり取りは英語で行います。海外メンバーとの連携が多いこの乗員保護システム部門では、英語力は欠かせない重要な要素だと感じています。
グローバルな組織における異文化コミュニケーションの秘訣
馬:チームの雰囲気はとても明るいです。タスク自体は衝突時を想定したリスクに関わる内容を扱っているので、自然と自分たちはポジティブでいるようにしているのかもしれません。海外出張者が来た際には飲み会をしたり、困難を乗り越えた際にはお祝いの食事会を開いたりと、若いメンバーも多く活気があります。
海外メンバーとのコミュニケーションでは、言語力に加えてお互いの文化を理解することを大切にしています。自分の中で正解だと思っていたことが、他の文化では通じないこともあるため、誤解が生じた際には絵を描くなど工夫して、理解のギャップをなくすよう努めています。
新田:オフィスはフリーアドレスで、部門によっては階やデスクエリアが離れていることもありますが、乗員保護システム部門のメンバー全員が同じ階の同じエリアにいるため、すぐに会話することができます。海外メンバーとの連携では、違いを受け入れ、より良い方法を探すことを意識しています。会議や電話では認識のズレを防ぐため、議事録を徹底して残すようにしています。
また、日本人は言葉以外の表情や雰囲気から意図を察する傾向があると学んでからは、その特性を理解した上で、海外メンバーにはよりはっきりと明確な言葉やデータで伝えるよう心がけています。
ベ:一人ひとりに合わせて伝え方や話し方を変えることを大切にしています。同じ国でも考え方や感じ方は人それぞれですので、相手に応じてコミュニケーション方法を調整しています。
乗員保護システム部門ならではのやりがいと未来の可能性
馬:何と言っても、人の命に直接関わるところに大きなやりがいを感じます。以前、ボッシュのエアバッグECUによって家族の命が救われたという、エンドユーザーからのお礼の手紙をいただいたことがあります。自分の仕事の価値をダイレクトに実感できた瞬間でした。
エアバッグECUの搭載位置は、車が最悪の状態でも確実に機能するよう守られており、自動運転のカメラやセンサー情報を統合する「最も安全な場所」として、今後より多くの機能が期待されています。機能拡張の可能性に溢れた製品だと感じています。
新田:アルゴリズム開発は、エアバッグの性能に直接影響します。そのため、NCAP(※)などのアセスメントで、自分が担当したプロジェクトの車両が選ばれると、成果が見える形で評価されるのが嬉しい瞬間です。お客さまとは完成車メーカーと部品サプライヤーという関係ですが、安全性能を実現するプレッシャーを、良い意味でワンチームとして共有し合い、一緒に解決できる点に、完成車メーカーを担当する醍醐味があります。
また、エアバッグECUが展開の可否を判断する際に用いる入力情報も、ADASシステムで使用されるカメラデータなど、多様化が進んでおり、こうした点からも今後の発展性を感じます」
※ NCAP(New Car Assessment Program):自動車の衝突安全性や予防安全性を評価し、その結果を公表する公的プログラム
ベ:やはり、自分の仕事が人命救助に直結している点が最大のやりがいです。お客さまへ技術的な内容を説明する中で、自分の知識が深まるおもしろさも感じます。馬の話にもあったように、お客さまからは「車として機能を増やしたいが、費用制限があるため部品点数は減らしたい」という要望があります。
その場合、減らした部品の機能を統合する場所として、エアバッグECUが最も安全な候補になります。今後はさらに多くのセンサー情報を取り込み、より賢い安全システムの中心として機能する可能性がある点にも期待しています。
乗員保護システム部門に求められる素質
馬:最も大切なのは、人の命に対する強い使命感を持っていることだと思います。「この車に乗る人はきっと大丈夫」と確信させる製品を開発していますからね。そして、海外拠点や社内外のステークホルダーと共通の目標を達成するために人を巻き込み、ときには必要な交渉をする力も重要だと考えています。
新田:任された仕事を自らリードし、人を巻き込み形にするオーナーシップが必要です。また、人の命を守る重大な責任を伴う仕事だからこそ、どんな難題にも粘り強く取り組む姿勢が不可欠だと感じています。自分の経験でもボッシュは入社1〜2年目から大きな仕事を任される環境なので、自分事として進める力が自然と鍛えられる点が魅力だと感じています。
ベ:ポジティブかつオープンな考え方が大切です。高い安全性が必要な製品のため、お客さまからの要求は非常に厳しいですが、「これは学びと成長のチャンス」と捉えられる人が活躍できると思います。そして、グローバルな環境で、さまざまな意見を受け入れ、柔軟に対応できる人が活躍できると思います。
ボッシュの乗員保護システム部門では、人命を守る責任ある仕事に挑戦しながら、世界各地のチームと協力して目標を達成する──やりがいのあるプロジェクトを通して、エンジニアとしての成長と多様なキャリアの可能性を広げられる環境があります。
※記載内容は2025年12月時点のものです。
※このページは「talentbook」に掲載された内容を転載しています。
出典:https://www.talent-book.jp/bosch/knowhows/60708