TWO-WHEELER &
POWERSPORTS
BUSINESS UNIT
Yuki.O
エンジニアリング部門 エンジニアリング統括
システムセイフティ開発
SWエンジニア
2012年入社
もともと興味の薄かった二輪車。
乗る楽しさを知り、運転支援の開発へ
私はもともと学生時代に自動車部に入ったことをきっかけに、自動車の魅力にのめりこんでいきました。前職でも、車載カーナビの基盤となるプラットフォームSW開発に携わり、非常にやりがいがあったものの、実車に触れる機会は多くありませんでした。「最前線でクルマの安全システムに関わる仕事がしたい」という思いから、ボッシュにキャリア入社することを決めました。
希望通り車両制御に関する部署に配属されましたが、担当になったのは自動車ではなく二輪車。正直、ボッシュに来るまではクルマと比べて興味がなく「危険な乗り物」というイメージがあったことも否定できません。しかし、自動二輪免許を取得し、自分で乗るようになってから「クルマよりもっと自由な乗り物」であることや、安全に乗りこなすポイントが理解できるようになると、運転する楽しさに夢中になりました。
当初はブレーキシステムの制御領域を担当しましたが、開発がはじまったばかりの運転支援システムに携わりたいと手を挙げて、以降は最先端の自動二輪用運転支援システムであるARAS(アドバンスト ライダー アシスタンス システム)の開発を担当。前走車に合わせて速度を加減速する「ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)」や「死角検知」「衝突予知警報」といった、四輪車では当たり前になった機能を二輪車の特性に合わせて導入しています。
日本がアシスタンスシステムの先行開発拠点。だから機能開発~実車試験まで一貫できる
ARASを開発するモーターサイクル&パワースポーツ事業部は2015年に組織として独立したばかり。その特徴は、日本がヘッドクオーターでありアシスタンスシステムの先行開発拠点という重要な役割を担っていることです。そのため、自分が二輪車に乗って感じた「こんな機能があったらいい」というアイデアを、自らコーディングして車両にソフトウェアをインストールし、自ら実車試験をして評価する…という機能開発の一連の流れをすべて行えます。「自分たちの作ったものを自分たちで評価する」というこだわりを持って開発ができる環境は、ボッシュのモーターサイクル&パワースポーツ事業部の大きな魅力ではないでしょうか。
これまで「バイクは運転を楽しむものだから、運転支援システムは必要ない」という考えが根強く残っていました。ARASは運転を楽しみながら事故を減らすことに貢献する機能を備えており、ライダーがバイクに対する新たな価値観を見出すポテンシャルがあります。自動車用の成熟したシステムをさらに磨き、バイクの挙動に合わせて機能を追求することが私たちの役割です。
ヨーロッパでの先行導入にあたっては、私も2018年から3年ほどドイツに赴任し、お客さまである現地のバイクメーカーとともに機能の打ち合わせや開発、実車試験を行ってきました。運転支援システムの面白い部分は、現地の交通事情に合わせて一般道で試験を行う必要があることです。お客さまと一緒にドイツのアウトバーンや市街地を走り、誰も経験したことのない機能を作り上げる。他では得られない刺激的な経験でした。
バイクならではの動きをシステムへ反映。自分で作った機能が事故を減らしていく
二輪車と自動車は車体の挙動が大きく異なります。ARASの技術的な特徴は、慣性計測センサーユニット(IMU)を使い、車両の走行状態に合わせた的確な運転支援を実現できることです。車両の挙動が自動車とは違うからこそ、開発者自身が二輪車を運転した経験を反映し安全で、かつエンドユーザーとして使いたいと思える機能になる工夫をソフトウェアに落とし込んでいきました。
機能ごとにインド、オーストラリア、ルーマニア、ドイツとさまざまな国のメンバーが参加しており、バイク好きが多く、みんな高いモチベーションを持って仕事をしています。一方で、ある同僚の女性開発者は、もともとバイク好きというわけではありませんでしたが、仕事をするうちに「自分で機能を評価したい」という思いが強くなり、免許を取得し運転訓練にも取り組んでいます。機能開発から実車試験まで一貫して担当できる環境は、バイクに興味がなかった人でも夢中になってしまう魅力を持っていますね。
二輪車もいまや数々の電子機器が搭載され、システムは複雑化しています。その中でいかにシンプルに、かつユーザーに役に立つ機能を作り上げるか。誰も見たことのない機能を、自分の手で作れることが、モーターサイクル&パワースポーツ事業部の醍醐味です。自由な乗り物であるバイクをもっと楽しく、もっと安全にするために、ARASをさらに進化させて社会全体の事故を減らすシステムの開発を追求していきます。