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Vehicle
Motion

ビークルモーション
事業部

OUR MISSION 安全で快適なクルマの制御を
ワンストップでつくる

ビークルモーション事業部は、ビークルモーションマネジメント、ブレーキ、ステアリング、乗員安全システム、ビークルダイナミクスセンサーの5つの技術領域で構成され、自動車の制御、安全性に関わる機能を開発しています。車体制御の領域では、「止まる」機能を担うブレーキブースター、事故を未然に防ぐ横滑り防止装置ESCⓇ、「曲がる」機能を担う電動パワーステアリング、車体制御を統合制御するソフトウェア・パッケージのビークルモーションマネジメントがあります。また、ESC Ⓡの制御などの重要な安全機能に必要なセンサー類と衝突時の被害を軽減するエアバッグコントロールユニットを製品ポートフォリオに持っています。

※こちらの動画の情報は
撮影当時のものとなります

OUR STRENGTH 私たちの強み

  • 01.
    車体制御における広範な知見

    車体制御の世界は歴史的な変革期を迎えています。新しい車両アーキテクチャは、ソフトウェアとハードウェアが切り離され、車両は「止まる」「曲がる」「走る」の全てが統合制御されるようになります。ボッシュは全ての領域で長年の知見があり、これを最大限に活用した新しい制御コンセプトを開発しています。

  • 02.
    自社のテストコース

    ボッシュには栃木県那須塩原市と北海道の女満別に、2つのテストコースがあります。実車で試験を行い、より良い開発に活かすことができます。

  • 03.
    最先端の工場

    ABSやESCなどの生産を行っている栃木工場は、ボッシュグローバルの中でもベンチマークとされている工場です。いち早くIndustry 4.0を導入し、切削など機械場もクリーンさを誇っています。またESCユニットを自動で組むラインも導入しており最新の設備を備えています。入社後には、研修の1つとして、工場実習も行っています。

  • 04.
    多くの世界初の技術

    ABS、TCS、ESCなど、ボッシュが世界で初めて量産化に成功した技術もたくさんあります。40年以上にもわたって培ってきた技術のノウハウを活かし、これからも開発を続けます。

  • 05.
    世界レベルでの車社会への貢献

    独立系サプライヤーであるボッシュは、様々な自動車メーカーの開発に関わることができます。あなたの携わった技術は1つの市場にとどまることなく、世界中のクルマ社会に貢献することができます。

OUR PRODUCTS &
SOLUTIONS
私たちの製品と
ソリューション

Vehicle motion management統合制御を可能にするソフトウェア
パッケージ

  • ビークルモーションマネジメント

    ビークルモーションマネジメントは、ブレーキ、ステアリング、パワートレインなど車両運動制御のための様々なアクチュエーターを統合制御するソフトウェアパッケージです。統合制御により、カウンターステアが減少、停止距離が短縮されることで自動車の安全性が向上します。

Actuation & brake components経済的でクリーン、そして安全に
「止まる」技術を開発。

  • アンチロック ブレーキ
    システム(ABS)

    1つ、もしくは複数の車輪がロックする兆候を迅速に検知して適切にブレーキ圧を制御。フルブレーキ時の車輪のロックを防ぎ、障害物の回避や安全な減速、停止をサポートします。

  • トラクション コントロール
    システム(TCS)

    発進時や加速時に適切なエンジン制御を行い、必要に応じてブレーキをかけて駆動輪の空転を防止。滑りやすい、濡れた路面といった環境下でも車両の安定を維持し、安全性を高めます。

    YouTube
  • 横滑り防止装置(ESC)

    危険な横滑りの兆候を早い段階で検知して、適切なブレーキとエンジンの制御により事故を防止。横滑りによる事故をESCで最大80%防止できるという、国際的な研究結果もあります。

    YouTube
  • iBooster(電動ブレーキ
    ブースター)

    すべてのパワートレイン、特にハイブリッド車、電気自動車に最適なブレーキブースター。ESCと組み合わせることで自動運転に必要なブレーキシステムの冗長設計も可能。一方が故障しても、もう一方の部品が車両を安全に減速、停止させる技術は自動運転には欠かせません。

  • バキュームブレーキブースター

    負圧の力を利用し、ドライバーがブレーキペダルを踏みこんだ力を増幅する装置。ドライバーのブレーキ操作力の低減サポートを行うシステムです。

  • iBooster(電動ブレーキ
    ブースター)

    すべてのパワートレイン、特にハイブリッド車、電気自動車に最適なブレーキブースター。ESCと組み合わせることで自動運転に必要なブレーキシステムの冗長設計も可能。一方が故障しても、もう一方の部品が車両を安全に減速、停止させる技術は自動運転には欠かせません。

  • バキュームブレーキブースター

    負圧の力を利用し、ドライバーがブレーキペダルを踏みこんだ力を増幅する装置。ドライバーのブレーキ操作力の低減サポートを行うシステムです。

Electric power steering高度な自動運転のための
キーテクノロジー

  • 電動パワーステアリング
    (EPS)

    ボッシュのEPSは、小型車から小型商用車まで広範なセグメントに対応しています。EPSには、ステアリングの制御・アシストする電気モーターが搭載されており、最適なステアリングフィールを提供します。新世代のコントロールユニットは、エラー発生時の安全性を提供できるため、SAEレベル4の自動運転まで対応可能です。

Passive safety & sensors万が一の衝突による被害を
軽減する技術を開発。

  • 乗員保護システム(エアバッグ
    コントロールユニット)

    複数のセンサーからの信号をもとに衝突を検知。すばやくシートベルトやエアバッグなどの乗員保護装置を作動させ、衝突などの事故による負傷から乗員を守ります。

  • 車輪速センサー

    アクティブ・ホイールスピード・センサは、ブレーキ制御システムに不可欠な部品です。非接触測定方法により、車両の車輪回転速度を検出します。

MESSAGE 事業部から就活生へ
メッセージ

    求める人材像

    • ・自動車社会に貢献したい人
    • ・グローバルな環境で
      働きたい人
    • ・Initiativeをとって仕事を
      進められる人

    事業部の特長

    チームワークも強く、必要であれば助け合う風土があります。一方で一人ひとり個性的で特別なスキルを持っているプロフェッショナル集団で、それぞれ自立して活躍している人が多いです。
    また、長年の歴史があり、組織規模が大きい事業部であるため、1つの事業部の中でキャリアの幅を広げることが可能です。プロセスや組織がしっかりしていて、エキスパートも豊富な環境で、仕事を一から学び、経験を積むことができます。

STORY 私たちの働き方

  • 栃木工場の仕事風景と、
    ワークライフバランス

    那須塩原の美しい自然の中にあるボッシュ栃木工場は、インダストリー4.0をベースにしたAI・IoTが進んでいます。そこでイキイキと働きながら成長を実感したり、休日を過ごす社員を紹介します。

  • 女満別のテストコース

    私たちが送り出した車は世界中で何百万台と動いており、それらの車の事故防止に繋がっているとすれば、私たちの仕事で多くの命を救うことになります。「どう車両を安定させるか?」という制御の決定権を持っていること。それが私たちの仕事であり、誇りでもあるのです。

  • 女満別テクニカルセンターの仕事
    風景と、ワークライフバランス

    テストコースと事務所が併設されているのも、女満別テクニカルセンターの大きな魅力です。思いついたら直ぐにテストできる開発環境はとても効率的です。ここ女満別で、車の未来を一緒につくっていきましょう。

  • シャシーシステム コントロール
    事業部で働く

    自分が適合した車が公道を走っている、例えば雪が降った時や高速道路でスピードを出している時、もしかしたら私の制御が動いて人命が救えているかもしれない、そういうところにすごくやりがいを感じています。

PROJECT STORY プロジェクトストーリー

ボッシュのテクノロジーを結集させた、
新型グローバルモデルを世界に届けよう。

安部 大輔 DAISUKE ABE
シャシーシステムコントロール事業部 開発
1999年入社

記事のみどころ

2016年に量産が開始された国内自動車メーカーの新型グローバルモデル。その開発が始まった2014年よりもさらに前から、プロジェクト獲得に向けて奔走していた1人の男がいる。彼はどのようにチームを導き、どうやってプロジェクト受注までの道筋を示していったのか。その真相に迫る。

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グローバルモデル搭載という誇り

2012年頃、シャシーシステムコントロール事業部営業職種でマネージャーを務めていた安部。
当時、安部のチームが任されていたのは、新規プロジェクト獲得活動および獲得後のプロジェクトマネージメント業務、価格交渉、営業戦略の立案、マーケットや競合他社の情報収集など、幅広い業務を担当していた。
そのような日々の中で、安部はお客様である国内自動車メーカーが2016年に立ち上げる予定の次世代モデルに対して、数年前から新規プロジェクト獲得のための情報収集活動を行っており、アプローチの準備を進めていた。
「そのお客様の車種はグローバルモデルとして世界中で販売されており、とても人気が高い車種です。
これまでに何度かモデルチェンジをしていて、現行モデルにはボッシュとして電子制御ブレーキシステムの搭載実績があります。

グローバルモデルに自分たちの製品を導入するということはとても誇らしいことであり、だからこそ次世代モデルには、前回以上の結果を残したいと思っていました」。
そして2013年7月、プロジェクト獲得活動がキックオフされた。

安部が担当することになったグローバルアクイジションマネージャーのミッションは、プロジェクト受注に向けての活動をリードしていくこと。
全体の戦略とスケジュールの中で、それぞれのメンバーがいつ、何をやるべきかを明確にしながら進んでいくことが主な役割だ。
しかし、グローバルモデルとなると関わる人数が半端ではない。
まず自動車メーカー側の生産工場が北米、イギリス、中国、ブラジル、ASEANにあるため、それぞれの国にあるボッシュの拠点の営業担当者たちとコンタクトを常に取り合う必要があった。
さらに、製品ごとにいる日本とドイツの開発メンバーもそこに加わるので、ボッシュ内だけでもプロジェクトに関わる者はゆうに50人を超えていた。
そのようなメンバーと共に、安部はプロジェクト獲得へと歩みを進めていった。

いくつものハードルを超えて

2016年の立ち上げ時を見据えて、まず安部は開発メンバー、各国の営業メンバーと共にどのような仕様が必要かを考え、戦略を立てていった。
その対象製品は、ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール=横滑り防止装置)、iBooster(電動油圧式ブレーキブースター)、車輪速度センサー、レーダー、フロントカメラであった。
現行で納入しているブレーキシステム関連技術だけでなく、運転支援技術も加えることで、より高い安全性を実現するとともにボッシュの幅広い技術力をアピールする内容となった。
「もしこれらすべてを受注できたら、ボッシュのシャシーシステムコントロール事業部において、その年のいちばん大きなプロジェクトとなる見込みがありました」。
そのような可能性を秘めていたこともあり、安部の気持ちはさらに引き締まった。

競合他社より先駆けて活動をスタートしていたため、ボッシュ側の準備は早い段階で整っていた。
自動車メーカーに新しい機能をはじめ、グローバルにおける展開方法に対して理解を得る戦略も整った。
それからは、立てた戦略通りに自動車メーカーのそれぞれの開発部署に対して、ボッシュの開発部門と共に製品の性能における優位性、次世代モデルの目指すところにマッチするコンセプト、ボッシュを開発パートナーに選ぶことの利点を1つ1つ説明していった。
「その後は、“先行開発をやりましょう”という話になり、実際にテスト車両を作成し、機能を確認しながら、お客様の開発部署とボッシュの開発部門とでテクニカルディスカッションを行っていきました」。
何事もなく進んでいるように思えるが、実はその過程で多くの調整が必要であった。
「プロジェクトメンバーが世界各国にいるので、全員の合意を得ながら進めていくのは非常に大変でした。製品の仕様や価格など、さまざまなことを話し合う日々。また、私から関係各所に何かを頼むとき、どう説明すれば納得のうえでアクションをしてもらえるかがずっと課題でした」。
頭を悩ます日々が続いた。

受注への自信を高めてくれたもの

約1年がかりのプロジェクト獲得活動も佳境の時期。
最終的に自動車メーカーから見積もり依頼が来て、その金額に承認をもらえれば受注となる。
もちろん他社との比較で判断されるのだが、安部は自分たちの製品を信じていた。
「製品自体がすごく性能の高いものでした。エンジニアたちが試行錯誤をしてくれたおかげで、すべての製品が次世代グローバルモデルにフィットしていたのです。お客様に選んでいただける価値が私たちの製品にはあると確信していました」。
そして、待ち望んでいた結果が訪れた。
自動車メーカーはボッシュを選択。
それも、5つの製品を受注することができたのだ。

「受注を目指してそれまで努力を続けていましたが、まさか5つの製品が採用される結果になるとは驚きました。グローバルモデルにシャシーシステムコントロール事業部だけで5つの製品を導入した事例はあまり聞いたことがなく、大きな達成感を得ることができました」。
安部にとって、この受注活動は忘れられないものとなった。

新たな目標に向けて走りだす

2014年4月、プロジェクト獲得活動は受注という最高のカタチで終了した。
そのときの喜びをチームのみんなで分かち合うために、また受注したプロジェクトを確実に遂行するチームワークを持つため、チームウェアがつくられた。
もちろん、安部にも渡され日々そのチームウェアに袖を通して仕事をしている。
社内で同じチームウェアを着ている人を見ると誇らしい気持ちになる。
また今回の受注はその年のボッシュジャパンにおいていちばん大きなプロジェクトとなり、ボッシュ・グループ全体においても、ワールドワイド各拠点にあるシャシーシステムコントロール事業部の中でトップセールスであった。
「私はその後異動し、開発職種でドライバーアシスタンスを担当することが決定。

自分で受注してきたプロジェクトに、今度は開発で携わることになりました。
立ち位置は変わりましたが、量産開始までプロジェクトに関わり続けることができて本当によかったと思っています」。

安部が2013年から関わってきた次世代グローバルモデルは、最近北米の生産工場において量産が開始され、今後もグローバルに展開される予定だ。
うれしい気持ちの一方で、安部は新たな野望を抱いていた。
「今回のモデルに搭載されている5つの製品はドイツがベース開発を行い、日本ではお客様に合わせてアプリケーション開発したもの。そのコアとなる部分をイチから日本でつくることができたら、今以上に誇らしいだろうと思うのです。日本発の新しい製品をつくり、世界へと展開させていく。それが私の目標です」。
そう語る安部は、すでにその目標に向かって具体的なアクションを起こしていることであろう。
安部の歩みは止まらない。

※掲載社員の仕事内容・部署は
取材当時のものです

北米向けの最高級車をターゲットに、
高い安全を担保する先進技術を積め。

山田 豊 YUTAKA YAMADA
シャシーシステムコントロール事業部 営業
2000年入社

記事のみどころ

2013年、ボッシュが満を持して世に送り出した電動油圧式ブレーキブースター「iBooster」は、すぐれた先進性・特性を持つ次世代技術のため、自動車メーカーのニーズに合致していれば、次世代のクルマに搭載される確信が山田にはあった。しかし、クルマづくりで走破性に重きを置く国内自動車メーカーの場合、話は大きく変わってくる。これは次世代モデルへの実装に向け、1人の男が逆風を突き抜けた物語だ。

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固定観念を捨て、自らの判断で決める

入社以来、ずっとボッシュの営業畑でキャリアを積んだ山田が、シャシーシステムコントロール事業部のゼネラル・マネージャーに就任したのは2014年のことだ。
担当する3社は、いずれも国内外で実績を持つ自動車メーカーだった。
前任者からは、そのうちの1社が最重点顧客であるという報告を受けた。
確かにそのメーカーのクルマは欧州での人気も高いことから、ドイツ本社の覚えもいい。
その流れはワールドワイドでの販売戦略の既定路線になっていたが、そこに山田は微妙な違和感を覚えていた。
思い込み、固定観念がチャンスを逃すことを長年の営業経験で知っていたからだ。そのようなとき、ボッシュから待望の新技術が登場する。
電動油圧式ブレーキブースター「iBooster」は、ハイブリッド車、電気自動車のブレーキシステムの中枢を担うコンポーネントだ。

クルマが、ドライバーの聴覚、視覚といった五感をセンサーやカメラで代替し、自律的に運転を補助する時代が進めば、より高いレベルで「きちんと状況を判断して止まる」というブレーキの安全性が求められるようになる。
そのような時代を先取りしたiBoosterは、ボッシュがワールドワイドで満を持して送り出した技術だ。
当時、山田はこの技術をどこにセールスすべきかを考えていた。
いったん固定観念は捨て、担当する3社をフラットに並べてみる。
「じっくり動向を観察してみると、かつてはクルマの“走り”を売りにしていたお客様が、最近ではその走りに加えて“安全”に軸足を移しつつある兆候があったのです。多くの車種がNCAPと呼ばれる安全評価で最高評価の5つ星を獲得し続けている。この安全評価を毎年更新するためには現状維持では不可能で、より高いレベルの技術を採用して安全性を高めていく必要があります」。
しっかりと止まる最先端のブレーキシステムが売れると山田は直感した。

ほぼ白紙からのセールス開始

山田が第一のセールス先として考えたのは先に挙げた最重点顧客ではなく、ボッシュとのコネクションの薄い別の自動車メーカーだった。
しかし、より高い安全性を提案できるという確信を持っていた山田は、ここに切り込んでいく。
「当然、そのお客様には取引のある別のサプライヤーがいます。そこよりも話す機会を増やすことが先決ですので、私自身はもちろん、すべてのレイヤーの窓口に対して腕利きの担当者をつけました。そしてお客様の社内全体の機運を徐々に高めていったのです」。
まずは新技術の説明から始める。
そこに興味を持ってもらえたら、次はクルマに採用する意義を丁寧に説いていく。
確実にNCAPが取れるブレーキ性能を発揮する技術であることに加え、さまざまな視点から有益な技術であることをアピールした。

「ただ、お客様の課題をまとめて解決できる反面、とにかく高価な技術なのです。その障壁をクリアするために、ときには心を鬼にして苦言を呈することもありました」。
ここまで山田が躍起になって売り込みを行った理由は、この技術が自動車メーカーとボッシュの双方に利益をもたらすという自信を持っていたからだ。
たとえ自動車メーカーからの要望でも無理であれば平然と断る。
つねに対等な立場で商談を進める山田に、初対面の担当者の多くは困惑する。
しかしグローバルな取引ではこれが標準であり、それを身をもって経験することで担当者の意識も変わっていく。
このマインドセットこそが、日本企業がグローバル競争に勝ち抜く条件のひとつだと山田は考える。
ともあれ、山田の熱意が心を動かし、自動車メーカー社内では北米向け次世代モデルへの実装ムードが高まっていった。

本社の理解を得るチャレンジ

そうしたセールスと同時進行で、山田はドイツ本社の説得を開始する。
そもそも、セールス先はドイツ本社が把握している最重点顧客ではない。
しかも北米市場に注力しているため、欧州市場での認知度も高くないのだ。
いくらグローバルで広くセールスしたい技術であったとしても、ドイツ本社が難色を示すのも仕方のないことかもしれない。
「そこからドイツ本社を説得するのですが、私の就任時には最重点顧客のビジネスを伸ばせと言い渡されていました。しかし、実際に担当してもっともこの新技術のポテンシャルがあるとわかったのは別のお客様。従来のミッションの方向を変えることが、もう1つのチャレンジでした」。
こうした各国・地域の担当者がドイツ本社にかけあうケースは、とくにボッシュでは珍しいことではない。
そこに商機があれば容認され、評価される企業風土なのだ。

「ただ、ドイツ本社を説得するのは大変です。まず“なぜ最重点顧客じゃないのか?”から始まって、“どれくらい実装の可能性があるか?”“将来性は?”など、いろいろなことを追及されます。事前にしっかり理論武装してやりあうのがおもしろい。しかしハードです。じつはドイツ本社の偉い人は怖いのです(笑)」。
本来、営業の仕事は自動車メーカーなどにモノを売ることだが、ボッシュの場合はやや事情が異なる。
これをジレンマととらえるか、チャレンジととらえるかで営業のモチベーションは変わる。
山田が大事にする座右の銘は「精神一到何事か成らざらん(Where there is a will, there is a way)」。
言うまでもなく後者である。
「ドイツ本社の説得が済んだら、あらゆる会議に顔を出してミッションの価値を営業と技術双方で協力し、熱弁していきます。そうするとだんだん社内全体の機運も高まってきて、いろいろな人が話に耳を傾けてくれるようになる。そしてドイツ本社とお客様のトップを会わせるところまでくれば、ほぼ大詰めです。あとはリソースをかけて実際に売る準備を進めていきました」。

アドバンテージとなる先進技術を売る

こうして、北米仕様のフラッグシップモデルに山田が提案したブレーキシステムは採用された。
このプロジェクト受注で初年度は数十億円の売上、その後も新規受注などで右肩上がりの売上を達成している。
就任当時はほとんどビジネスが無かったことを考えると、まさに起死回生の受注と言えるだろう。
「1つ突破口ができれば、そこに紐づけていろいろな提案ができます。ドカンと売れても翌年は急落するパルスのような営業は絶対にやってはいけない。つねに新たな魅力を感じてもらうための種植えが必要です。これは私が担当するすべてのお客様に対して心がけていること。長期的な戦略を立て実行し続けることが大切になります。ブレーキシステムだけではなく、ボッシュにはさまざまな技術があるので他の事業部と連携すれば広がる可能性が大きすぎて、いまは正解が決められません。いろいろなチャレンジの方向は残されているのです」と語る山田は製品を売るのではなく、顧客の将来的なアドバンテージとなる先進技術を売るのだと言う。

2012年、日本に技術母体を持つ事業部に移ったことで山田の価値観は大きく変わった。
「日本にいる技術者を営業に同行してお客様と技術論を交わすと、よくボッシュの技術は自分たちの少し先を走っていると驚かれます。そうした新しい技術を売ることに改めて誇りを感じています」。
余談ではあるが最近、山田はロードタイプの自転車に凝っていて、週に数回、20kmほど走ったあとの出社を日課にしている。
レースにでも出るのかと思いきや「競技には出ません。出たら絶対に勝ちたくなるから危険なのです」と笑う。
まさに生粋のチャレンジャーなのだ。

※掲載社員の仕事内容・部署は
取材当時のものです